CS関連書籍の独断書評?3

書評は、評価を本の題名等の後に星のマーク(☆)で、0〜5ケで表します。


書評第7号は (2016.6.1)
「キリンビール 高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え!」
(著:田村 潤)講談社+α新書(H28.4.20) 評価:☆☆☆
です。

本書はマーケティング関係、もしくは、ブランディング関係の本だと思いますが、CSの本質をついていました。
キンリビールとアサヒビールの競争は激しく、1位、2位を競っていますので、『勝利』という文字に少し違和感はあるかも。
まず、18ページにて、キリンビールの理念は「品質本位」「お客様本位」の追求、と紹介されています。
本来、「顧客」と「お客様」は位置付けが異なるので、厳密に言えば「顧客本位」が良いのですが、ここはスルーしましょう。
本書の内容は、明らかに「お客様本位」ではなく「顧客本位」です。しかも、昔からのキリンラガーを愛飲する顧客です。

CSを突き詰める時に、よく、ES(従業員満足)が先か、CSが先か、という議論が発生します。正直、難しい問いです。 しかし、本書を読めば、CSが先だと考えざるを得なくなると思います。
その最初が44ページから書かれています。
ESはCSが実現されることによって、はじめて発生するものだと感じることでしょう。
久し振り?(他の著者の方、失礼!)にCSの良書に出会えたなと思います。褒めている割には☆が少ないですが、 これはキリンビールが断トツのNo.1になっていないから+私には「一番搾り」のほうが口に合うからです。


書評第8号 (2016.6.27)
「「顧客満足」の失敗学 社員満足がCSを実現する!」
(著:瀬戸川 礼子)同友館(2008.12) 評価:

「「顧客満足」の失敗学 社員満足がCSを実現する!」 この本、失敗でした。
北杜夫さんの言葉に「本との出会いは縁」というようなものがありましたが、これからすると、 この本を読んだ時期の私はCS本との縁が悪かったようです。
確かに、本屋でCS本に呼ばれる機会が減っていました。(今も似たような状況ですが・・・)

本題に戻って、皆さんは畑村先生の『失敗学』についてご存知だと思います。そのつもりで、この本を読んではいけません。
そのようなストーリーにはなっていません。
どのような内容かと一言で言えば、社員満足、多くは、従業員満足(ES)と言いますが、ESが足りない会社では、
CSが実現されない、というべきところを、間違って、ESがCSを実現すると言っています。
書かれている事例は、従業員の不満の発生原因は異なりますが、いずれも、従業員は不満を持っており、このため、 会社の成果は出ない、売り上げがあがらない、倒産等に陥る、というものです。
確かに、失敗の原因は、従業員の不満にあると思います。しかし、ESをあげれば、CSが必ずあがるかというと、
実際には、CSがあがるとは限らないのです。
このあたりは、坂本先生の「従業員を大切にする会社が生き残る」という説のよくある間違いだと思います。

しかし、このような本を買ってしまうように、私も失敗から学ばなければ・・・



書評第9号 (2016.7.24)
「「ひと粒五万円!」世界一のイチゴの秘密」
(著:白石 拓)祥伝社新書(2016.6.10) 評価:ナシ

☆ナシは厳しい評価だと思われるでしょうが、本書には読者をバカにし過ぎていると思われる部分があるためです。
本書はタイトルのイチゴの話とブドウの話の2つが掲載されています。
全194ページの本で、イチゴの部分は156ページ、残り38ページ数がブドウの話です。
読んでみると、このブドウの38ページが、内容に深みが全くなく、どうしても「1冊にするにはページがたりなかった」 ために付け足したとしか考えられないのです。これが本書を☆ナシにした理由です。
CSで大切なことは、自分たちの都合を顧客(本の場合は読者)に押し付けないこと、です。 この基本中の基本が忘れられている本という意味で☆ナシにしました。

さて、肝心の内容ですが、ブドウについては、書評するに値しないのですが、イチゴについては、大変、素晴らしい内容です。
著者が農家によく出向いて取材していることもよく判ります。また、農家の方の考えを、平易に、 多くの読者に届けるよう工夫されてもいます。
イチゴの部分だけなら、文句なしに星5つ、です。
まだ読まれていない方は、イチゴの話の内容は、マーケティングに関わるものと想像されると思います。
確かにそのとおりなのですが、CS本としても素晴らしいのが、農家の方が「おいしいイチゴ」を提供する、という、 自分の考えを、どのようにして考え出し、どのようにして実現したか、が明確にされているからです。
CSは、提供者側が、提供できる価値(この場合は「おいしいイチゴ」)を顧客に明示し、顧客が提供価値に共鳴する、 ことにより成立します。このイチゴの話は、そのとおりになっており、いかにして提供価値を創り、 明示するかの実践が詳細に渡り(企業秘密は除く)記録されています。

本書はイチゴ部分の156ページで、価格を改訂し、出版され直すことを期待したいと思います。

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