CS関連書籍の独断書評?8

書評は、評価を本の題名等の後に星のマーク(☆)で、0〜5ケで表します。


書評第22号は (2019.6.3)
「サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」
(著:正垣 泰彦)日経ビジネス人文庫(2016) 評価:☆☆☆☆
です。

私の所属する、とあるCS研究会にて、「最近はCSって言わないよね」という話になり、現在のCSの在り方を問う行うことになった。
この参考のために購入した本がコレです。
CS本ではなく、飲食業の経営者向けの本です。う〜む、と疑問に思う話もなかには結構多くありました。
しかし、CSの神髄を突いている点もありましたので紹介したいと思います。

この本のタイトル「おいしいから売れるのではない」は、
経営者は「自分の店のほうが美味しい食べ物を提供している」と 過信を持つことを諫める言葉として使用しています。
「売れているのがおいしい料理だ」は、売れている=人気がある、ということであり、そのお店の料理より自社のほうがより 「美味しいのに」と考えてしまい、「なぜこのお店は人気があるのか?」という視点に立たないことが多い。これを諫める言葉 として「おいしい料理」という言葉を当てはめています。
私が「おいしい」と「美味しい」を別々にして記載しているのは区別するためです。本ではこのような区別はありません。 悪しからず。

著者は、「おいしい」と感じるのは、お客様であって、経営者ではないこと、
そして、「おいしい」には、料理の質もさることながら、いつ、だれと、どのような状況で食べているのか?が重要と説く。
毎日食べるものと、特別な日に食べるものとでは、お客様は求める質などが異なるでしょう、と説いているのである。

「おいしい」と感じるのは、お客様であって、経営者ではない。言い換えれば、「お客様料理に満足されること」ですよね。

前の書評でも書きましたが、繰り返して記載すると、

CS≠「お客様満足させること」
CS=「お客様満足されること」

でした。どうでしょう。サイゼリアの会長である著者の考えはCSそのものだったのです。
ここまで褒めて、星4つの理由は、著者がサイゼリアで提供したいことは「イタリア料理を日本に紹介すること」 だそうですが、その理由として、開業された当時、日本ではイタリア料理がほとんど提供されていなかったことのほか、 フランス料理は毎日食べられない、というようなことが書かれていました。
自分でヨーロッパに旅行した体験からだそうですが、ちょっと気になる表現です。
折角、良いことを一杯書かれているのに、このように表現する必要があったのかと大いに残念に思ったので、減点☆1つです。


書評第23号 (2020.1.8)
県庁の星
(著:桂 望実)幻冬舎文庫(2008) 評価:☆☆

映画にもなった有名な本。CSを学ぶのに良いと紹介された本(と映画)。2005年に単行本が発刊。
CSに関しては、いままでで一番最悪に近い本。
ちなみに、いままでで一番最悪の本は、書評代8号の「「顧客満足」の失敗学 社員満足がCSを実現する!」です。

CSの勉強には向かないような気がしています。だったら、紹介するなというご意見があると思いますが、 何が良くないのかを紹介したいと思います。

この映画は見ていないのでなんとも言えないが、ストーリーの大半は故伊丹十三監督の「スーパーの女」 のパクリではないかと思われる内容です。しかも、その上で、公務員の悪さをステレオタイプでスーパー デフォルメしただけに感じられてしまうのが残念です。
いまでもそうですが、公務員を無能、または悪者にしておけば、ストーリーとして成立しやすいので、 良い公務員が多くいることを無視してしまうことは、CS以前の問題として良いとは思えません。 当時、人気の映画・小説とのフレコミであしたが、これでは日本映画や文学を地に落とす役割しかないような 気がしたので、これまで書評に書けなかったのです。

ここまで書いておいて褒めるのも何ですが、登場人物に在留外国人が多く、当時の現状認識としては非常に 良く素晴しいと思う。ノンフィクションの本であるが、真実味があった。



書評第24号 (2021.5.2)
「となりのクレーマー」 「苦情を言う人」との交渉術
(著:関根 眞一)中公新書ラクレ(2007.5.10) 評価:☆☆☆

CSに関する書籍ではないので、ずっと紹介すべきかを迷っていた本の1つです。
この1年間、書評を追加出来ずにいたのは、新しいCS本が出版されないからです。
正確に言えば、出版されていますが、ディズニー関連の焼き直しの本と日本の航空機会社系の本しか見当たりません。
CSが真に定着して本が出版されなくなったのであれば、何の問題もないと思いますが、CSよりクレーマー対策などに 力点が移行しているように思えるのです。

そこで、ホンの少しだけCSの観点がある『クレーム対応本』も書評に書こうと思い、 ようやくこの本を引っ張り出してきました。
この本の良いところは、(多分)事例が著者の体験したことに限られていること。
ご自身が対処したクレームのことだと思われることしか書いていないことです。
読んでいて一緒にその場を体験している感があります。今の言葉でいえば「リアル」です。 そして、クレーマー対応時にある一線を画されています。
このクレーム対応時に一線を画することがCSで言うところの 「顧客に当方の提供できる価値を明示すること」そのものだったのです。
半分、こじつけ感があるまとめですが、読んでいただければ同意されると思います。 また、クレーム対応の基礎を理解しやすく書いてあります。

褒めておいて「星3つ」は、この本はやはりCS本でないためです。

目次に戻る